未来(あした)に向かって逃げろっ!

 

280年前。実際に津山藩内の山中(さんちゅう)(現・岡山県真庭市)で起こった一揆を背景に、農民・()兵衛(へい)の姿を通して「弱さを引き受けることから始まる生」を描き出す本作は、制作に3年を要し、完成後は4ヵ月間に渡って岡山を中心に巡回上映した。

 

その後ニューヨークで開催された北米最大の日本映画祭「Japan Cuts」での上映では、「黒澤明の作品を彷彿とさせながら、新たな切り口を見せる時代劇」と大きな反響を呼んだ。

 

監督は、真庭で農業を営みながら「地産地生映画」を制作し続ける山崎樹一郎。名もなきそれぞれ個人の思いと選択が未来を切り開く。


()兵衛(へい)は出産を控えた妻・たみと共に山中の村で静かに暮らしていた。

 

ある日、たみの兄から蜂起すると聞き、その場に参加するよう促される。渋々従う治兵衛。

集まった大勢の農民たちを前に、藩は要求を受け入れる。それで事態は治まったかに見えた。

 

しかし数日後、一部のものたちが起こした打ちこわしをきっかけに武力衝突へと拡大した。

だが圧倒的な藩の力を前に、一揆衆はひとりまたひとりと倒れていく。


その渦中、治兵衛はすべてを投げ捨て村から逃げることを選んだのだが ―